電脳遊戯 第24話


「フレイヤ、来ます」

セシルの声とともに、画面にはフレイヤ弾頭が表示された。

「ここで撃ってきたか!」

ルルーシュはすかさずギアス兵にフレイア処理の命令を下した。そしてそれ以外の機体には、フレイヤの範囲から逃げるよう命ずる。
それは一部の兵による命がけの爆弾処理だった。
このような命令を平然と下すなど信じられない。その命令に従うなど信じられないという思いが多くの者の心に湧き、動揺が走ったが、次の言葉でその思いは霧散した。

『怯むな!フレイヤ弾頭は、こちらの特別処理部隊が対応する!彼らはフレイヤにより愛する家族を、友を消され、フレイヤをこの世から消し去るために志願した勇敢なる戦士達!彼らの命を無駄にするな!我々は!この凶悪な大量殺戮兵器の前に屈してはならないのだ!明日を迎えるためにも必ず勝たねばならない!彼らの命に報いるためにも我々はダモクレスを落とす!』

億を超える民が一瞬で消された。
それも、目の前にあるダモクレスと、そこにいる三人の皇族によって。トウキョウ租界に落とされた数千の命を奪ったフレイヤもまた、シュナイゼルの部隊が保有していた事は、それを戦場に持っていくよう強要され、そして撃つよう命じられたという元ナイトオブセブンであるナイトオブゼロ、枢木スザクが証言していた。
あのような兵器だと知っていればたとえ命令違反となっても撃つことなど無かったと、その表情は悲痛なものであった。
愛する子を、家族を、恋人を、友を亡くし、未来に絶望した者の数は死者の数をはるかに超える。
その中には、フレイヤと心中する決意をする者がいてもおかしくはない。
そして、ルルーシュ皇帝はその者達の熱意を受け止め、この天空要真ダモクレスと、最悪の大量殺戮兵器フレイヤを彼らと共に打ち倒そうとしている。

もし自分が同じ立場だったら?
エリア11はまだいい。あの時あの場所は戦場だった。
だが、エリア1は違う。
しかも、発射命令を出したあの皇女は、全員が避難したから撃ったいう、妄言まで吐いていた。そこに落とした理由など口にすることもなく。
どう見てもルルーシュ皇帝に対して、自分たちはこれだけの力を所持している、だから降伏しろという宣言のためのもの。
すでにエリア11で撃たれていて、その威力を全世界が知っていたのだ。それなのに、所持をほのめかし威嚇するのではなく再び落としたのは、ただ力を見せつけるため。
自分が手に入れたおもちゃを見せびらかすのと同じだ。
愛する者を、あんな愚か者達の手で意味もなく殺されたと知ったら?
たとえ無駄死にと解っていても、ダモクレスに特攻を仕掛けただろう。
ルルーシュ皇帝はそんな者たちをまとめあげ、彼らに戦うべき場所を与えたのだ。
彼らだけが戦える、未来をつなぐための戦場。
あの3人を天空から引きずり下ろすための人柱。
それが、フレイヤへの特攻。
この戦いに参加した者達はその意味を悟り、そして迷いを捨てた。

幾つものフレイヤが多くの命とともに消え去ったとき、アヴァロンより黒い機体が飛び立った。その機体はゼロの専用機として有名な蜃気楼のフォートレスモード。
ゼロが前線に!?
兵士の士気を上げるためか?

『陛下、フレイヤ発射されます』

オープン通信で聞こえたオペレーターであろう女性の声に、まさかあの機体に乗っているのは!と皆の背筋が凍った。

『愚かだなルルーシュ!自ら前線に出てフレイヤの餌食になる道を選んだのか!』

それは、 声から元黒の騎士団副司令、扇のものだとわかった。
やはりそうなのだと、兵士達は焦った。
フレイヤは蜃気楼目がけて放たれていた。

陛下!!

そう叫ぶ声があたりに響いた時、ルルーシュ皇帝唯一の騎士、ナイトオブゼロ枢木スザクが駆るランスロットアルビオンが蜃気楼の側へとたどり着き、その機体に装着されていた槍のようなものを手に取り、フレイヤ目がけて放った。
その槍とフレイヤが接した瞬間、あの凶悪な兵器はその力を失い、霧散した。
息つく間もなく蜃気楼はKMFへと変形し、全ての攻撃を無効化させていた天空要塞ダモクレスのブレイズルミナスをその機体の力で抑えこみ、ランスロットと数騎のKMF共に乗り込んでいった。

---皇帝自ら特攻を仕掛け、敵陣に乗り込んだ。

その事に呆然とした面々だったが、アヴァロンよりもたらされるオペレーターからの指示に我に返り、まだ戦争は終わっていない、黒の騎士団の旧幹部と、シュナイゼルの私兵を討たなければと、意識を切り替え、目の前の敵を見据えた。
なぜなら、ここにはまだ黒の騎士団最強の機体・紅蓮と神虎が暴れている。
ダモクレスに乗り込んだルルーシュたちを追おうとしているのは明白で、たとえ機体性能では負けていても必ず勝つ、陛下の邪魔はさせないと、彼らは一丸となり、凶悪な強さを誇る2騎に向かっていった。

ルルーシュ皇帝とその騎士スザクの手によりダモクレスは落ちた。
ダモクレスは危険とされ、太陽に進路を向け、数カ月後その姿を完全に消滅させた。
反ルルーシュ派であったシュナイゼル、コーネリア、ナナリーの元皇族はあらゆる権利と地位を剥奪され、シュナイゼルとコーネリアに関しては各家が保有する財産も全て没収された。
多くの命を奪った罪を償うため、監視つきで被災地での活動に従事させたのは、自分たちの罪をより深く実感させるための処置であった。
最初は生涯幽閉という案が出されていたが、それでは生ぬるい、いつまた支持者を集めルルーシュ皇帝に牙を向くかわからない、何より現実を彼らがわかっていないという声に負け、市民の生の声・・・つまり彼らを糾弾する声が聴こえる場所へと送ったのだ。勿論三人に危害が加わらないよう、ルルーシュは各国の国民に対し演説も行い、護衛もつけている。
市民たちの声を聞き、彼らは自分たちがいかに傲慢で無知だったかを知り、どれほどの罪を犯したのかを悟るだろう。
ルルーシュは三人とその従者、そして騎士団の元幹部たちにギアスをかけた。
ギアスとコード、不老不死と神に関するあらゆる記憶を消し、自ら死を望むことも心を狂わせることも許さず、反乱を起こすことも無いように念入りにその力を行使した。
念のため全員、ギアスをかける前にキャンセラーをかけている。
シャルルの記憶改竄で操られていた者がいないかを調べるためだ。
結果、ナナリーは視力を取り戻し、あの悲惨な現場をその目で見ることになった。
どれほどの罪を犯したのか、それを知り苦しむであろうナナリーを思うと、ルルーシュは手を差し伸べてしまいそうになるのだが、彼女を見捨てることもルルーシュの贖罪だと説得され、彼女の身の危険が無いようにだけ念入りに手配することでルルーシュは折れた。

賢帝ルルーシュの戦闘とその思いを間近で見た各国の代表、そしてエリア解放後代表となる予定の者達は、ブリタニアの超合集国加盟を熱望した。
そして最高議長兼黒の騎士団CEOとなるよう打診していた。
本来であればゼロが再びCEOに返り咲く場面であり、ルルーシュ皇帝を議長とし、万全の体制を取りたい所なのだが、ゼロはあの暗殺事件によって表に出ることは叶わなくなったとC.C.とジェレミアが説明し、彼らはしぶしぶながら諦めた。
だが、ルルーシュ皇帝がゼロと繋がっている以上、ゼロの意志とルルーシュ皇帝の意志は同意だと判断され、その結果兼任してほしいという話となったのだ。


神聖ブリタニア帝国皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは名実ともに世界をその手中に収めた。
世界はゆっくりとだが確実に若き賢帝の元、優しい世界へと作り替えられていった。

争いのない平和な世界へと。

だが、そんな世界を作り出すブリタニア皇宮では連日争いが起きていた。



「枢木卿!ここより先通す訳にはいかない!!」
「な!ジェレミア卿邪魔しないでください!これは僕とルルーシュの問題です!」

皇帝の私室へ向かう通路に立ちふさがったジェレミアに、スザクは言い切った。

「あらぁ?なになに、またやってるの?ルルちゃんを手にしようなんて、いい加減諦めたら?」

騒ぎを聞きつけ、ひょいっと顔を覗かせてきたのは、皇帝直属の報道カメラマンとなったミレイ。彼女は今、この宮殿の一室で暮らしていた。
密かに皇帝の元婚約者という噂が広まっており、皇妃候補の一人となっている。
ルルーシュとの恋仲を邪魔する存在。
そのため今はスザクの敵の一人に数えられていた。

「そんなこと言って会長さんも狙ってるんでしょルルーシュのこと。渡しませんよ」
「私は元婚約者だから権利はあるわよ。まあ、シーちゃんがいる以上私に勝ち目は薄いんだけどねぇ」
「会長!会長には俺がいるじゃないですか!」

ミレイと共にこの宮殿に移り住んだリヴァルは、若干涙目になりながらも自分をアピールをしたが、完全に無視されていた。これだけ至近距離だから間違いなく聞こえているのに、ミレイは無反応なのだ。

「リヴァル、まだ諦めてないんだ」

僕なら耐えられないよ。

「お前に言われたくない!」

似たようなもんだろ!

「そーいえば、シーちゃんの不老不死の話が世界中で話題になってるの知ってる?」

突然切り替えられた話に、スザクの眉が面白いほど寄った。

「そうなるように仕向けたの会長さんですよね?」
「ふふふ、だって面白いじゃない!で、世界中の人が、ならばルルーシュ皇帝にも不老不死になっていただき、恒久の平和を世界に!って話が出てるの、知ってた?」
「え!?」
「不老不死が継承するものなら、どうにか不老不死者を見つけ、説得し、ルルちゃんに譲って欲しいって動きがあるのよね。そしたらシーちゃんを皇妃にできるじゃない」

美男美女のカップルでお似合いだって、周りは騒いでるのよね~私だって美人なのに酷いと思わない?

「な!?駄目ですよ!駄目!!何なんですかその話は!僕は認めませんよ!!大体C.C.はゼロの愛人であってルルーシュは同志です!」
「黒の騎士団のゼロの正体はルルーシュ陛下って話も何故か流れてるのよねぇ。それなら辻褄も会うんじゃないかって検証作業もされてたりするのよねぇ」
「まあ、バレるのは時間の問題かもな」

爽やかすぎる笑顔でいう二人に、一瞬で血の気が引いた。

「ちょ、二人共!わざと流してるだろその情報!!も~やめて、そういう事は!・・・チャンスっ!ジェレミア卿失礼します!」

ジェレミアも知らない情報だったらしく、思わず動揺した隙に、スザクはジェレミアを交わし、皇帝の私室を目指した。

「くっ!しまった!!」

ルルーシュがいるであろう方向に猛スピードで駆け出す筆頭騎士スザクの後ろを、ナイトオブワンとなったジェレミアが追いかける。
そんな姿をミレイとリヴァルは笑顔で見つめていた。

「スザクぅ、今後もっと警戒は厳しくなるんだぜ?まあ、がんばれよぉ」

現実を知り、国民がルルーシュを支持し、賢帝と呼ぶのはギアスの力のせいではないと悟った赤の騎士が、ルルーシュにひれ伏し、この中に加わる事は、あの筆頭騎士が知らない情報。
彼女が来れば、ますますルルーシュの身は安全になるだろう。

「いや~ん!たのしいわねぇ~!」

きっとスザクくん驚くわよ~!

「会長~いい加減、遊ぶのやめたほうがいいですよ」

相手は皇帝と筆頭騎士ですよ。

「馬鹿ねぇ。本当にルルちゃんが不死身になっちゃった時のことを考えれば、少しでも私たちのこと記憶に残さなきゃね?」
「まあ、そうですけど・・・」
「さーて、建国記念日はぱーっと盛大にやるわよー!ルルーシュを餌にすれば、きっと面白くなるわ!ルルーシュは絶対に女装させなきゃね!」
「会長~」

そんな会話をこっそりと聞いていたC.C.は、もしルルーシュが不老不死になってもこの娘には一生勝てないんだろうなと、苦笑した。

23話